SCP-201-JP -ざんごのハイウェイ

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SCP-201-JP.jpg

非活性状態のSCP-201-JP

アイテム番号: SCP-201-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-201-JPが存在している土地は財団のフロント企業によって買収され、工事中の名目でSCP-201-JPの出入り口は封鎖され、尚且つ当該オブジェクトの入口には警備員に扮した財団職員2名が常駐し、一般人の立ち入りは禁止されています。異常を発見した場合は速やかに研究チームに報告される事が義務付けられています。

オブジェクトの表面は事件記録201-JPを受け、定期的に清掃が行われ、障害物が存在しない状態に保たれます。この際、レベル2以上の研究員の許可を受け、ウォーヴェ式心理テストにて80点以上の評価を得た一般職員が用いられます。また、監視カメラを設置する際はSCP-201-JP内に存在しないようにしてください。

20██年06月14日現在、SCP-201-JP-1の出現が1年以上観測されていないため、オブジェクトクラスをNeutralizedに指定する協議が進められています。

説明: SCP-201-JPは北海道札幌市内に存在する、走行距離約57.8kmのかつて使用されていた高速道路です。SCP-201-JPは当初、「首のない人型実体がバイクで走行する道路」として財団により調査が行われており、その過程で活性化状態となったために収容が行われる事となりました。その際、財団、土地を管理していた所有者、並びに国土交通省の間で交渉が行われ、199█年に名目上の閉鎖が完了しました。

SCP-201-JP-1は特定の事例に関して、当事者の意識を有する人物(以下: 対象)が当該オブジェクト内に立ち入る事をトリガーとして出現する人型実体、並びにその実体が乗車しているオートバイの総称です。外見は多くの点で男性的特徴を有しており、体長は180cm前後と推測されています。当該実体は常に黒のバイクスーツにヘルメットを着用し、時速80kmほどの走行状態で出現します。

SCP-201-JP-1は走行中、常に項垂れ、前方を確認して走行することはありません。ただし、走行中のSCP-201-JP-1を対象が追い抜いた状態で、前方からチャンネルを「031」に合わせたトランシーバーを用いる事で、当該実体はオートバイに装着されたトランシーバーを用いて会話に応じることがあります。この際、実体は常にオートバイのスピードを上昇させます。この行動によって時速200kmまでスピードを上昇させる様子が現在までに確認されています。なお、SCP-201-JP-1を追い抜き続けた状態であれば、SCP-201-JP-1がSCP-201-JPを越えて消失するまでの間、会話を試みることが可能です。

SCP-201-JP-1が出現した被験者の特徴として、自らの犯罪歴や知己の人物との死別に関して強い当事者意識を有している事が心理学者より挙げられています。また、実体と会話を行った際にそれらの被験者は全員が自らの犯罪歴や知己の人物との死別に関する状況説明、並びに問題点、更に当事者意識からなる後悔や悲哀を例に挙げてSCP-201-JP-1を停止させようと試みます。これらの一連の行動には強制力が存在していると推測されており、実験により試みを停止するように指示があった場合でも、被験者は説得などを続けます。そしてSCP-201-JP-1の消失後、被験者は実体を停止させられなかった事に対する後悔や悲哀の念を抱き、激しい自己嫌悪に陥り、これを記憶処理によって取り除く試みは全て失敗に終わっています。

補足資料: 事件記録201-JP
SCP-201-JPを用いての実験中、出現したSCP-201-JP-1が道路に存在していたコンクリート片に躓き転倒しました。その際、SCP-201-JP-1の装着していたヘルメットが破損し、ハマナス(Rosa rugosa)と推測される花弁が成育された頭部が露出しました。その後、消失するまでの1時間47分58秒の間、被験者のトランシーバーからは以下のような文面が、繰り返し叫び声と共に流れていました。

Ni-Do1が、Ni-DoがSozaXei2をすべる、すべる、すべる。ああ、かけた!私はかけた! Addiee3は、既に逃げおおせただろうか。Blockageral4の中に、二酸化Zoar5の空気濃度の幻を見た。それでも零れぬ、そう、私は既に。

補遺: 以下はSCP-201-JPに関して行われた最後の実験に関しての音声、録画ログの書き起こしです。この実験以降、20██年06月14日現在、SCP-201-JP-1の出現は一年以上観測されていません。

音声ログ201-JP

インタビュアー: エージェント・[削除済]

対象: SCP-201-JP-1

<記録開始>

[エージェント・[削除済]がSCP-201-JPを追い抜かし、トランシーバーを用いて話しかけ始める]

エージェント・[削除済]: お前、そんなに急いでどこに行くんだ?

SCP-201-JP-1: 貴様には関係ない。

エージェント・[削除済]: あるね。スピードを出す人間は、必ず何かを抱えてるもんだ。もちろん、俺だってな。何かあるんなら話してみろよ。

SCP-201-JP-1: [沈黙]

エージェント・[削除済]: 黙ってても何も変わらないぜ。

SCP-201-JP-1: 重ねて言う。貴様には関係ない。

エージェント・[削除済]: ならあんたは話さなくていい。俺の話を聞いてくれよ。

SCP-201-JP-1: [嘆息] 勝手にしろ。

エージェント・[削除済]: ああ、勝手にするぜ。俺はスピードになりたかった。けどなれなかったんだ。スピードを出すために必要だったものをどこかに置き忘れちまった。エンジン、ガソリン、タイヤ、ボディ。何もかも全部な。それでもまだ俺はバイクに乗り続けてる。それはきっと、彼女に対しての後悔と懺悔なんだろうな。

エージェント・[削除済]: あの日、サイト-8181である化け物の収容違反が起こった。無敵で、鉄のようで、それでいて俺の道しるべとなってくれたあの人は他の研究員を庇ってあっという間に死んじまった。本当に、あの人は死なない、あの人に限って死ぬことはないって思ってたんだけどな。俺達はどこまでも人間だった。

エージェント・[削除済]: その知らせを聞いた時、俺はサイト-8181に向かっている途中だった。法定速度も、警察の静止さえも振り切って、誰よりも速くサイト-8181に向かおうとしていたんだ。サイト-8181まではあと数kmの位置だった。耳に着けてたイヤホンから、信じられない報告が飛び込んできた。アクセルを握りこんでた腕に、力が入らなくなった。その後ずっと、道の真ん中で立ちつくして、どうして間にあわなかったんだろうとか、どうして俺はスピードになって、彼女の下に辿り着く事はできなかったんだろうとか、どうして死ぬのが俺じゃなかったんだろうとか、色々考えてるうちに、ワケ分かんなくなってその場に蹲って歩けなくなった。その日から、バイクに乗ることを止めた。

SCP-201-JP-1: ならば何故貴様は今、その忌々しき乗り物で、私を遮ろうとする。貴様が再びそれに乗った所で、件の女性は帰ってはこないのだろう。

エージェント・[削除済]: そのままそっくりお返しするぜナス野郎。お前は一体いつまで下を向いて、現実を見ないで進み続けるつもりだ?

SCP-201-JP-1: 何?

エージェント・[削除済]: バイクを運転する時に、下を見て運転する馬鹿は普通はいねぇよ。いたとしたらそれは、自殺志願者か怖くて前も見れない小心者だろ。違うか?

SCP-201-JP-1: 私は小心者ではない。貴様とは違う。私は何度でも繰り返し、必ず間に合わせる。

エージェント・[削除済]: だから前を見ろっつってんだろ。お前の目的地は今、どこにあるんだよ。

SCP-201-JP-1: どこに、それは、目の前に。

[エージェント・[削除済]がSCP-201-JP-1の前方より右に外れる。SCP-201-JP-1は狼狽した様子で発言を始める]

SCP-201-JP-1: [困惑した様子を見せる]違う、どこだ、ここは。いや、いつだ、ここは。間にあわなかった、私はNi-Doがすべるまでに、彼女の元に、間にあわなかったのか? 間にあうはずだと何度も私は!

SCP-201-JP-1: 彼女に、Addieeに頼まれて、私はいつものように買い物に出かけた。そう、彼女の大好物だったKera-Harazinの材料を買いに行ったのだ。SozaXeiを抜けて、光宮の御膝元まで、私は駆けた。彼女は変わっていた。後から聞けば、高貴なるゲ-ディルの女官ヴェンロータイでありながら、卑しきヤグェンドであった私を私財をはたいてまで買い叩き、雑用係としての役割を受け持たせたのだ。疑問を提示すれば、答えはいつも決まって言っていた。退屈しのぎでもあり、自分はUgosa6の花が好きなのだと。ただそれだけの理由で私を買ったかと思えば、庭にはUgosaの花の1つもない。この辺りは二酸化Zoarの濃度が高く、育てる事ができないからと彼女は笑っていた。だが母親から受け継いだばかりの職務に追われ、幼い御身に蓄積された疲労の、その顔の悲しそうなことよ。それでも彼女は時々、有頭階級の世話や私的な要求の話を私にしては、ただ笑っていた。彼女は、彼女にも見えない誰かをきっと守ろうとしていた。だから、その日は買い物だけではなく、彼女にUgosaの花束を贈りたいと思っていた。肉と、卵と、そしてUgosaの花束を買った時、ああその時! 天蓋が崩れ去った!

SCP-201-JP-1: 光芒に何かあったのか、この国の終わりであるのか、周りの奴らは皆うろたえるばかりであったが、私はそれらには目もくれず馬に乗りこんだ。何より彼女の安否が心配であった。その時私は初めて彼女抱いていた感情を理解した。唾棄するべきである、不遜である、そのような考えが頭の中を巡っていたが、今は何よりもAddieeに会いたかったのだ。願わくば……卑しきこの身が砕け散るその日まで、彼女と共にいたいと。崩れゆくSozaXeiを再び抜けて、彼女の屋敷へとただ私は駆けた。ただ、私が屋敷に辿り着いた時には既に、Ni-Doは、屋敷の、事如くを。

SCP-201-JP-1: 必死で彼女を探した。数多の瓦礫を押し分けて、ただひたすらにその子どものような身躯を探した。自らの体が再構築されていくのにも気をやれず、ボロボロになった腕で、脚で、いない、どこにもいない。どこにも。嗚咽を漏らしながら、出もしない涙を流しながら、ただAddieeだけを。

SCP-201-JP-1: そうして幾分かの時がたった頃、私は見つけてしまった。彼女がいつも好んで腕に着けていたVenutと、彼女の右腕を。そこで私は思い知った。私は、間にあわなかった。そうして、この世の冬を見た。彼女の右腕とUgosaの花束だけを抱いて、私は崩れゆく屋敷の中へと入り込んだ。せめて、彼女が好ましく思っていたこの花だけは、Addieeに届けてやらねばと。継ぎ接ぎの扉を肩で押し開けて、穴だらけの廊下を抜け、もう彼女のものではない部屋に辿り着いた。そこに、Addieeの右腕とUgosaの花束を、添えて。

エージェント・[削除済]: ……そうか。

SCP-201-JP-1: これは罰だ。私が招いた罰であるのだ。須らく物ごとには罰がある。人はそれを抱えて生きていくしかないというのに、その罰に見合わぬ待遇を、期待した愚かな私への罰であるのだ。いくら懺悔をしても、結果は変わる事はない。Addieeは、私が殺した。

エージェント・[削除済]: だったらそれでも生きていくしかねぇだろ。このままだとお前もその女も、誰一人救われない。死よりも苦しい生なんていくらでも存在する。それを受け入れられもしないお前が、一体何を以ってここに来た俺達を語るんだよ。

SCP-201-JP-1: ああ、私の、罪は。

[SCP-201-JP-1が転倒と同時に消失。それに反応したエージェント・[削除済]も急ブレーキをかけた事によりスリップし転倒する]

エージェント・[削除済]: [呻き声]これでいいんだ。

<記録終了>

結果: この実験の以後、SCP-201-JP-1は出現していません。なお、エージェント・[削除済]はこの実験により右足を粉砕骨折し、フィールドエージェントとしての職務の再帰は不可能と判断されました。また、この実験における多数の情報漏洩と命令違反といったこれらの事例を考慮し、解雇措置が取られました。

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